株式会社サトキン
代表取締役社長 大塚 康幸
群馬県高崎市 | 製造業 | ~100名
銅合金・アルミ合金鋳造、アルミ熱処理、その他関連品
2026年2月10日
4人が辞めた経験から見えたもの——サトキンがたどり着いた“相互選択”の外国人エンジニア採用
「人手不足ですね。」
サトキン代表・大塚社長の一言は、地方の中小製造業が直面する現実そのものだ。一般募集をしても人が集まりにくく、日本人の採用市場は売り手。条件の良いところへ人が流れ、「わざわざ製造業に来る理由」が薄くなっている。加えてサトキンは高崎市の市街地から外れた立地にあり、通勤面でも不利がある。そこで同社は、外国人材の活用に舵を切った。
ただし大塚社長が強調するのは、「採用したら終わり」ではないという点だ。言葉の壁、受入れ負担、定着——不安が多い領域だからこそ、先に“設計”を置く。その設計の出発点は、意外にも採用の見方を変えることだった。
つまずき:優秀層を“外から連れてくる”だけでは合わなかった
エンジニア人材が必要になった背景には、現場に外国人ワーカーが増え、取りまとめ役も必要になったことがある。鋳造は設計・技術が要で、CADや解析的なイメージが求められる。しかし「大卒で鋳造の現場を選んで来る日本人は、正直ほとんどいない」。そこで外国人エンジニア採用に挑んだ。
最初は、いわゆる優秀大学の人材が中心のエージェントを使った。ところが「うちの会社のレベル感と合わなかった。志というか価値観が合わなかった」。日本のものづくりは、まず現場を経験して理解する時間がある。だがその“1年”が耐えられず、「俺はこんなはずじゃない」と離職が続いた。結果として4人が辞め、やり方の見直しが必要になった。
転機:“会社が選ぶ”から“お互いに選ぶ”へ
転機となったのが、Zuittとの出会いだ。大塚社長が面白いと感じたのは、会社側が選ぶだけではなく、候補者側も会社を見て「ここに来たい」と応募してくる“相互選択”の形だった。
「分かった上で入ってくるほうが、分からずに来て辞めていくより定着する」。この一言は、外国人採用を検討する経営者にとって大きなヒントになる。重要なのは“学歴”ではなく、「志が会社と合うか」。その確認には、会社の現場や仕事を見てもらうプロセスが欠かせない。
判断軸は3つ:「志」「受入れ側の覚悟」「期待値調整」
大塚社長の言葉を整理すると、採用判断の軸は大きく3つに集約できる。
- 志(価値観)が合うか:大学の優秀さより、何をしたいか/何に耐えられるか
- 受入れ側が“与えて育てる”覚悟があるか:「優秀だから勝手にやってくれる」人はいない
- 期待値を合わせられているか:現場理解の時間を、本人が納得して持てているか
「相手を過大評価してる企業は失敗すると思うよ」。この言葉は、“採用のミス”を個人の能力のせいにしない、経営姿勢でもある。
受入れ設計:言葉の壁は「毎日の伝達」と「見える化」で薄くする
言葉の壁に対してサトキンが重視するのは、特別な制度よりも日々の運用だ。毎朝の朝礼では10分ほど話し、英語と日本語を交えて外国人にも伝わるようにする。さらに年1回、ホテルで方針発表の場を設け、売上も説明し、質問もさせる。「俺が一方的に話すんじゃなくて『みんなでやってる』って理解させたい」。
評価は月1回。半年ごとだと忘れてしまい、本人の自己評価と周囲の評価のギャップが広がる。だから短期で評価し、積み重ねを“見える化”する。コメントも残し、「どうすれば上がるか」を分かるようにする。朝礼・年1の総会・月1評価——このセットで「サトキンイズム」を伝えていく。
定着は生活面から:免許、車、引っ越し、そして“気持ちを向ける順番”
定着の話になると、大塚社長は「生活面から一緒」と言い切る。運転免許を取ると世界が広がるため会社として支援し、車を買えない場合は会社の車を使える時間を作る。引っ越しも手伝う。年末は大掃除と窓拭きのあと、焼肉を囲む。
そして象徴的なのが、始業の時間だ。始業は7時50分だが、社長は6時半に出社して鍵を開け、暖房と電気をつけ、工場の準備をする。それを続けるうちに、フィリピンのメンバーが社長より早く来て準備をしてくれるようになった。こうした貢献は見落とされがちだからこそ、ミーティングで「こういうことをしてくれてる」と言葉にして伝える。
「仕事のことだけ叱ってもダメ。まず仕事以外のところから支えて、気持ちをこっちに向けて、それから仕事。順番が大事。」——“現場負担を増やさず定着させる”とは、結局この順番を崩さないことなのかもしれない。
これから検討する企業へ:「求めるなら、会社側もやることがある」
外国人エンジニア採用は、採用手法だけの話ではない。大塚社長は最後にこう語る。「自分たちが求めるものはあるけど、求めるなら会社側もやることがある。生活面から一緒。日本人以上に世話を焼くくらいの覚悟がないと受け入れは難しい」。
不安があるのは当然だ。だからこそ、①期待値調整(相互選択)②毎日の伝達(朝礼)③見える化(月1評価)④生活の支え——この“受入れ設計”を先に描くことが、失敗確率を下げる。
外国人エンジニア採用の進め方や、受入れ設計の作り方を自社の状況に合わせて整理したい方は、まずは情報交換からでもご相談ください。